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エスポ化学スタッフコラム 第99回 「AIの時代を迎えて —未来の技術者たちへ伝えたいこと—」
エスポ化学の全社員が不定期でコラムを配信します。
悪臭対策のとっておきのノウハウはもちろん、製品ページではご紹介出来ない情報や、
社内の裏話などもお届けする予定です。
テーマ「AIの時代を迎えて —未来の技術者たちへ伝えたいこと—」
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今や、世の中は空前のAIブームに沸いています。かつて私は、AIが社会の仕組みを真に支配するようになるのは2030年頃ではないかと予測していました。しかし、現実の進化の速度は私の想像を遥かに超えていました。今やAIが自ら新しいAIを創り出す時代を迎えており、先日の朝刊でも、自衛隊が導入を検討している米パランティア社製のAIが日米共同演習に組み込まれたというニュースが大々的に報じられていました。安全保障の領域にまでAIが深く関与している現実に、時代の大きな転換期を実感せざるを得ません。
ここで一度、私たちは技術的な立脚点に立ち返り、「AIをどう利用すべきか」、あるいは「いかにしてAIに利用されないようにするか」を真剣に考えてみる必要があるのではないでしょうか。
そもそも、AIの本質(アルゴリズム)とは何でしょうか。それは、人間が与えた膨大なデータと目的に基づき、統計的なパターン処理によって「知的に見える振る舞い」を生み出しているに過ぎません。アルゴリズムとは、突き詰めれば「問題を解決するための手順や方法」であり、コンピュータにとっての設計図です。したがって、AIの性能の差は、その設計図がいかに緻密に出来ているかという点に懸かっています。
しかし、この高度な設計図がもたらす「もっともらしさ」にこそ、私は大きな危うさを感じるのです。
先日、ひとつの実験を行いました。約45年前に他界した私の母方の祖父について、生成AI(ChatGPT)で検索してみたのです。祖父は郷土史家であり、いくつかの著作も残している人物でした。ところが、AIから返ってきた答えは「戦後の政治家でした」というものでした。その回答の文章は極めて精緻に構成されており、もし私が真実を知らなければ、そのまま事実として信じ込んでしまったことでしょう。技術がもたらすこの「精巧な嘘」に、私は背筋が凍るような悪寒を覚えました。
技術者としてある目的のために調査を行い、時間をかけて自分なりの結論を導き出す——私たちはこれまで、そうした泥臭いプロセスを積み重ねてきました。しかしAIは、その結論を一瞬にして弾き出してしまいます。
恐ろしいのは、周囲の人間がその結果を精査することなく“鵜呑み”にしてしまう傾向があることです。仮にAIが的外れな回答をしたり、明確な答えを出せなかったりした際にも、「AIが『他に原因がある』と言っているから」と、そこで思考を停止させてしまう姿を目にします。これでは確かに大失敗は避けられるかもしれませんが、前例のない新しいものを生み出すことなど到底不可能です。
このような「思考の委ね」を繰り返していけば、遠くない将来、人間は自ら考える力を失い、AIの指示通りに動くだけの「単なる作業手」へと格下げされてしまうのではないか。私はそんな強い危機感を抱いています。
では、私たちはこの強力なツールとどのように向き合っていくべきなのでしょうか。私は二つのアプローチを提案したいと思います。
- ① 対象に対する基本原理を徹底的に学習し、個人の知識量を増やすこと。
- ② その確固たる基盤の上に立ち、AIを「優秀なセカンドオピニオン」として活用すること。
私たちのような製造業(メーカー)の現場における業務は、大きく「新製品開発」と「既存品改良」の二つに分けられます。それぞれにおけるAIとの向き合い方は以下の通りです。
新製品開発において
すでにデータが存在する領域においては、AIの回答を大いに参考にして実験の効率化を図るべきです。しかし同時に、AIが答えを持っていない「空白の領域」にこそ、私たちが思考を巡らせる余地があります。自ら蓄積した知識を足場にして、時には過去のデータから飛躍した大胆な仮説を立て、新しいものへと挑戦する姿勢が不可欠です。
既存品改良において
品質の改善などにおいては、過去の記録を精査することが基本ですが、往々にして「記録に残されていない現場の事実」の中にこそ、真の答えが隠されているものです。画面の中のデータだけに頼るのではなく、実際に現場へ足を運び、五感を使って泥臭く改善を進めることが何より大切です。
あらゆる技術業務の本質は、事前に必要な情報を頭に叩き込み、熟考した上で実行に移すことにあります。まずは技術的な仮説を立て、失敗を恐れずに突き進むことです。もし上手くいかなかったのであれば、それは最初の仮説(動力学的仮説など)が間違っていたという貴重な発見です。ならば、新たな仮説を組み立てて、再び前に進めばよいのです。決して「実験が未熟だったから」という安易な言い訳で片付けてはなりません。結果が出るまで問い続ける「執着心」こそが、技術者の命です。

若き技術者、研究者の皆さん。
とにもかくにも、まずは自分の頭で猛勉強し、自分の手で実験を重ね、泥臭く結果を出していこうではありませんか。皆さんが流した汗と、その結果として蓄積された確かなデータ(文献や実験値)があって初めて、AIはその真価を発揮し、私たちを「新たな地平線」へと導く有効なツールとなり得るのです。
AIは決して恐れるべき悪ではありません。人が使われる側へと回らぬよう、主体性を持って正しく乗りこなすことができれば、これほど心強い相棒はいないのです。皆さんが自らの知性と執着心を信じ、素晴らしい未来を切り拓いていくことを心から願っています。
関連リンク
- 朝日新聞デジタルより「自衛隊の日米訓練にパランティアAI 2.8億円の契約と変わる戦闘」
https://www.asahi.com/articles/ASV6B3T07V6BULZU00DM.html
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